SRBC 福本安男 退職してある程度時間に余裕ができたので、今まで手の届かなかったスチームエンジンのスケールシップに 初めて挑戦しました。斉藤製作所のネプチューンと云う1/40の外洋タグボートをたまたま入手することが 出来、初めてにしてはかなり大型ですが早速製作に取り掛かりました。ベテランの方にとっては当たり前 の事ばかりかも知れませんが、これからスチームエンジンのスケールシップを始めようとお考えの方に参考 になればと思い、初心者の視点で製作の過程、苦労などをまとめてみました。 スペック ■ 全長1200mm ■ エンジン T3DR ■ 全幅 250mm ■ ボイラー B3 ■ 全高 500mm ■ RC装置 6CH 3サーボ ラダー・レギュレーター・前後進 〔準備〕 (1) 組立説明書の熟読 飛行機のキットの様に全体の設計図はありません。この組立説明書が唯一の手引きですが、非常に 詳しく丁寧に工程順序なども判り易く記されています。 下記の部品の確認と同時に何回も目を通しておくと製作のイメージも湧いてきます。 (2) キットの部品の確認 このキットには大きいものはFRP製の船体から小はブリッジのドアヒンジ金具、虫ピンに至るまで非常 に多くの部品が子袋にパッキングされています。長期間に亘る製作の過程で紛失したりしないように、 組立説明書の部品表に合わせ員数チェックを兼ねて部品保管ケースに各パッキング袋毎に保管します。 ダイカット部品は全て例えばA-8、B-12のように鉛筆で記入しておきます。 この時ダイカット部品の外枠にも同じように記入しておき製作終了まで保管しておくと紛失したり、失敗して 再製作する時に有効です。 |
|
(3) 工具 特に変わったものはありませんが、 *カッターナイフではOLFA細工カッターがお勧めです。刃先が30度の鋭角刃で切り口がよく見え細かな 作業に適しています。 *穴開けではデッドセンターが一本あるとエンジンマウントの位置決め/穴開けを初め、部品の取り付けで 何回も穴を開け直すことなく一発で決まります。 *ネジのタップ立て作業では、M3とM4のステンレス用のタップがあると綺麗なネジが作れます。 *アルミ材、真鍮材などの金属材料を切断するのに『現場屋』の鋸がお勧めです 新潟県三条市の石鋸工業と云う会社の替刃式金工専用鋸ですが素晴らしい切れ味で快適に作業が 出来ます。ホームセンターで1500円位で購入できます。 *艤装品でABS板、手摺りの真鍮線をカットするとき、タミヤのプラモ用薄刃ニッパーを使うと切断面が 直角で綺麗に仕上がります。 (4) 接着剤 シアノ系瞬間接着剤は使用箇所に応じ、各種粘度ののを使い分けますが、私は ゼリー状の瞬間を多用しました。エポキシは5分、15分、30分とありますが5分と15分を主に使いました。 (5) 塗料 基本的には2液性のウレタン塗料でTHCエンジンウレタンを使用し、甲板材は水性 ウレタンのチーク色、 一部小物部品はラッカーを使用しました。各工程毎にエンジンウレタンのクリアーを吹き付けて仕上げます |
|
[船体の製作] (1)甲板とフレームの位置決め 組立説明書に従ってフレームの接着位置決めをしますが、甲板に各フレームの位置をケガいて船体に乗 せて船体の両側面に移しフレームの前後方向の位置を決めます。甲板の上下方向の位置は舷側上面か ら27mmですのでアルミのアングル材で簡単な治具を作って両側面内側にケガキ線を入れます。甲板に 左右の傾きが出ないように正確にケガキます。 *A6フレームが組立の基準になりますが、これからの製作上非常に重要な作業ですので慎重に且つ正確 に行う必要があります。この工程のポイントは甲板をFRP船体に無理なく出し入れできる様に丁寧に整形 することです。 *各フレームと縦通材のヒノキ棒を接着したら甲板を乗せる前にFRP船体の内側を塗装すると楽に作業が 出来ます。私は実船でも使用されている大日本塗料のFRP用のポリベストトップコートと云う濃緑色の水性 塗料を刷毛でコテコテに塗り、その上にウレタンクリアーをたっぷり塗り込みました。 |
|
■骨組みを船体に取り付けたところ | |
(2)甲板材の貼り付け キットの甲板材は長さが70cm程ありますから本船の縮尺を考えて25cmにカットしました。貼る前に 一本ずつ面取りをしておきます。貼り方は組立説明書の通り中心から左右に外側に向かって、前後方向 は隣の板とずらして千鳥配置にしてゼリー状の瞬間接着剤で貼ってゆきます。全ての甲板材の貼り付け が完了したら、適当なベニア板にサンドペーパーを貼り甲板材の表面をサンディングします。320番、 400番耐水、600番耐水の順に削り過ぎないようにサンディングします。 甲板材の塗装前に船体舷側の排水溝をドリルとルーターで穴開けをしておきます。 甲板材は水性ウレタンニスのチーク色を3回程刷毛塗りしました。一度塗って乾燥後耐水サンドペーパー を軽く掛け、繰り返すと綺麗に仕上がります。最後にウレタンクリアーを2回程吹き付けて仕上げました。 |
|
(3)ブルワークステー ブルワークステーは1oのABS板で作りますが若干大きめにカットしておいて取り付け場所に合わせて トリムします。前から順に番号を書いておき、全体を仮付けして、間隔や向き等のバランスを見てから瞬間 で取り付けました。船体ブルワーク内側のABS板、ブルワークステーの塗装に先立ち甲板材全体をブル ワークステーの間も含め丁寧にマスキングします。このマスキングは船体の塗装が全て完了するまで剥が しません。ブルワーク内側とステーを灰青色に調合して塗装し、ウレタンクリアーを2回程吹き付けて乾燥 後丁寧にマスキングします。これで船体内側部分は全て塗装とマスキングが完了です。 (4)スタンチューブ、ラダーの取り付け スタンチューブ穴、軸受けブラケット穴はスクリューの推進軸に影響するので慎重、正確に開けます。 スタンチューブは30分硬化のエポキシで接着しますが硬化まで時間が掛かるので瞬間接着剤でスポット 的に固定して軸が狂わないようにしました。ラダーはこの時点で取り付けてしまうと外せなくなり、これから の工程の中で破損したりするのでラダーシャフトの穴を開けて仮組みだけして取り外しておきました。 |
|
■メンテナンスを容易にするためアルミ板を使用したエンジンベット | |
(5)エンジンベットの製作、取り付け スタンチューブの取り付けが済み、スクリューがセット出来る様になったらエンジンベットの取り付けに入りま す。キットでは6mm厚の板材(木製)が用意されています。私も最初はこの板材を使用しましたが、ギアー ボックス、エンジン、ボイラーをレイアウトして取り付け、修正しているうちにネジ穴がルーズになったり、長期 間使用していると水とか油で汚れ耐久性も落ちるので金属製にした方が良いとアドバイスを受けましたので 早速秋葉原で3mm厚のアルミ型材を購入しました。 メカをレイアウトして全体の長さを決め4mm径のキャップボルトと埋め込みナットとして高さ15mmの長ナット 6本で船体に固定するようにしました。 埋め込みナットの船体への取り付け手順は、先ずエンジンベット 型材に長ナットをキャップボルトで軽く固定し、A8枠板からの寸法を基準にして船体に置きます。この時の 長ナットの位置を船体にマーキングして一度エンジンベット板を降ろし、マーキングした場所の周囲にダム を作り15分硬化のエポキシを充填します。又エンジンベットに仮止めした長ナットの先端にもエポキシを塗り 再度エンジンベットを船体に置いて長ナットとダムの中のエポキシとで固定し固まった時点でエンジンベット を取り外し固定された長ナットを丁寧に改めて補強する。これでエンジンベットと長ナットはおのずと狂う事 なく揃うことになる。この作業はスクリューシャフトとエンジンベット(エンジンシャフトとスクリューシャフトに 接続してから)と同時に固定することが基本です。(二軸の場合は異なります) *この工程のポイントは水準器を使用して船体の横方向と縦方向の水平を出しておき、更にエンジンベット も前後、左右の水平を正確に出して長ナットを固定することです。 *メカのレイアウトは後部煙突に合わせてボイラーの位置を決めるのとA8枠板からの寸法が基準です。 長ナットが固定されたらキャップボルトを緩めエンジンベットを外し、エポキシで固定された長ナットの周り を水中ボンドで補強しました。 これにより4mmキャップボルトでメカを搭載したままでエンジンベットの 取り外し取り付けが簡単にできメンテナンス性も抜群です。 メカの取り付けで2連ギアー、ボイラー、バーナーはレイアウトした位置に3mmのキャップボルトで直接 取り付けるように穴を開けタップをたてます。エンジンは3mm厚の型材のネジだけでは心配なので、 型材の裏側に3mm厚の真鍮板をボルト、ナットで固定し、厚さを6mmとしてタップでネジをたてました。 このとき前述のデッドセンターを使うとエンジンマウント ホールが正確、簡単に開けられます。タップも ステンレス用のタップを使用すると綺麗なネジが出来ます。 |
|
■船体にエンジンマウントの取り付け用六角ロングボルトを埋め込んだところ | |
■エンジンを据付をする場所に真鍮材で裏側に補強した | |
(6)操舵室/ブリッジ、エンジンルームの製作 操舵室、ブリッジは組立説明書に従って製作しますが、ダイカット板の接合部はパテで仕上げて おかないと塗装した時に線が残ってしまいます。ブリッジハウスと操舵室は今後のアトラクションの 追加などを考えて接着せずに爪付きナットを使用して取り外し可能にしておきました。ブリッジ板 ばりも甲板と同様にケガキ線のまわりから貼り、完了したら艤装品、煙突等を取り付ける前に水性 ウレタンのチーク色で塗装し、ウレタンクリアーで仕上げます。乾燥後マスキングをしてブリッジ外側 の塗装をします。エンジンルーム、メカハッチは組立説明書に従って製作します。 |
|
(7)艤装品 基本的には組立説明書に従って製作し、単体で塗装仕上げまで行っておきますが、一番苦労 したのが梯子の製作でした。説明書では2mmと1mmの真鍮線が指示されていますが、丸い真鍮 線では梯子を等間隔と平行に接着するのは容易ではありません。試行錯誤の末、2mmの真鍮角 パイプに1mmの穴をピンバイスで貫通させず等間隔に開けてステップの1mm真鍮線を通し、 ゼリー状の瞬間で接着しました。真鍮角パイプは東急ハンズで購入できます。 (8)船体の塗装 @ 船体内部(刷毛):FRP用ポリベスト.トップコート/ウレタンクリアー A 甲板材 (刷毛):水性ウレタンニス チーク色/ウレタンクリアー 乾燥後マスキング B ブルワーク内側(吹付):ウレタン灰青色(調合)/ウレタンクリアー、乾燥後マスキング C 船体外側下塗り(吹付):プライマー(FRP用スプレー缶)、サフェーサー D 船体外側の白いライン(吹付):ライン上下をマスキング後ウレタン白を塗る乾燥後ラインと喫水下 をマスキング E 船体外側黒色 (吹付):ウレタン黒色、乾燥後マスキング F 船体外側喫水下(吹付):Dで実施した喫水下側のマスキングを外しウレタン赤に若干の黒を調合 して喫水下を塗る G 船体外側の塗装が終わったらマスキングを外し、ステッカー類を貼った後、全体にウレタンクリアー を塗装する。 *甲板、ブルワーク内側まではクリアー塗装までしておきますが、船体外側は全部の塗装が終わって からウレタンクリアーで仕上げました。 *喫水下の塗装を最後にしたのは、ウレタン赤に黒を若干調合するので黒い船体に合わせた好み の色合いにしたかった為です。 *塗装作業は塗装ブースなどの設備を持っていないのでかなり苦労しましたが、主として2液性の ウレタン塗料を使ったので、乾燥に時間が掛かりますが、一工程ずつあせらずに時間を掛けて、 じっくりと作業しました。 H ステッカー *煙突のイニシャルはキット内のはがきを出せば、斉藤製作所からオーナーのイニシャルのステッカー を送ってもらえるのを忘れていて、ホームセンターで購入してしまいました。 (完成後送ってもらいました) *舷側のロゴ(SAITO SALVAGE CO LTD)パソコンとインクジェット プリンターではクリアーのベース に白文字のステッカーは出来ないのでカッティング ステッカーのショップにサイズとフォントを指定 して作成してもらいましたが一枚450円位でした。その他、船名(NEPTUNE)と喫水深さの表示の ステッカーも貼りますが、全てのステッカーを貼ってから全体のクリアー塗装をします。 |
|
|
|
後記 昨年の12月に製作を開始したスチームエンジンの第一船が約3ヶ月で何とか竣工にこぎつけ、 初走航も無事に出来たのですが、自分なりに総括してみると、 @殆ど知識も経験も無いので組立説明書を熟読し、ひたすら説明書の通り進めた。 A部品管理、塗料/接着剤などの製作材料を含めた充分な準備をした。 Bプラモデル等と違い手作業の部品製作が多いのでそれに応じた工具の準備をした。 C詳細な製作手順は指示されていないので自分なりの工程手順を考えて、接着してしまって 後からでは作業出来ない等が無いようにした。 D初心者にとっては問題点であっても、経験者にすれば簡単な事かも知れないので 疑問点があれば積極的にアドバイスを求める。 E船にもよるが簡単に完成する物ではないので、腰を据えて焦らずに取り組む事が一番重要 だと思いました。 以 上 進水式の様子 |